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首相公選制とは
首相公選制とは、首相(内閣総理大臣)を国民の直接選挙によって選出する制度を指します。
現行では、首相は国会の議決で国会議員の中から選出されています。

国民の政治参加の促進を目的として首相公選制を提唱し公約に掲げた小泉純一郎氏が2001年の自民党総裁選で当選したことでも大きな話題となり、以降も同制度の導入について議論が続いています。
議院内閣制と首相公選制の主な違い

首相公選制になった際に首相が持つ権限については、「大統領型の首相公選制」にするか「議院内閣制型の首相公選制」にするかによって異なってきます。
大統領型の首相公選制
アメリカの大統領制に非常に近く、首相・副首相を国民投票で選出する方式。
首相は国民の信任により選出されているため、強力な権限を有し、弾劾されない限り4年の任期が約束される。
議院内閣制型の首相公選制
現行の議院内閣制の中で首相を国民投票により選出する方式。
国会は首相に対する不信任決議権を有し、首相は国会解散権を有する。
日本と同じ議院内閣制を採用するイスラエルは1992年に首相公選制を導入しましたが、小政党乱立による政局混乱で2001年に同制度を廃止しています。
メリット
国民の意思反映の強化
首相を国民が直接選ぶことで、「一部の党員・政治家だけ」ではなく「全国民の民意」に基づき首相が誕生するため、国民の意思が政治体制に大きく反映され、民主主義における正当性が高まるとされています。
過去には森政権(2000年)や菅政権(2010年)のように国民による投票(衆院選)を経ずに政権が誕生した事例があります。
首相選出過程における不透明性の解消
事実上の首相選挙とされる「与党党首選挙」における派閥争いや利害関係といった党内の論理で首相が決定されているのではないかという疑念に対し、全国民が首相を直接選ぶことにより首相選出プロセスの透明性を確保することの重要性が謳われています。
首相の政治的リーダーシップの強化
国民の投票により選ばれた首相は民主的権威を持つため政策実行能力が強まると考えられています。
現状、首相が国会に政策案を提出する際には、与党による事前審査を経る必要があり、これが首相率いる内閣の政治的リーダーシップを抑制していると同時に責任所在を曖昧にしているという意見が一部あります。
首相公選制により民主的権威を持った首相が誕生すれば党のしがらみを受けず公約を実行できる可能性が高くなります。
国民による政治への関心の向上
国のトップを直接決める投票権を全国民が持つことになれば、政治や選挙に対する関心が高まり投票率の増加も期待されます。
アメリカ大統領選と同じように、個人のリーダーシップが問われる選挙では候補者の個性やビジョンが前面に出ることで候補者同士の政策論争が活発化するため、国民による政治への幅広い関心を集めることができるとされています。
デメリット
権力集中のリスク
直接投票により選出され民意を得た首相は、国民からの支持を背景に議会に対して強い影響力を持つことになります。
これにより、首相の権力が過度に強大化し、「チェック・アンド・バランス(権力の抑制と均衡)」が失われてしまう可能性があります。
強力なリーダーシップが独裁的リーダーシップに変貌してしまうリスクも考慮しなければなりません。
政治停滞のリスク
議院内閣制では、首相は国会の多数派によって選出されるため、原則として国会と首相の間に大きな対立は生じにくい構造になっています。
しかし、首相の選挙と国会議員の選挙を別々に行うことで、首相の所属政党と国会の多数派政党が異なる状況が生まれる可能性があります。
そうなった場合、首相と議会の対立が起こりやすくなり、政策が進まず政治停滞が発生する恐れがあります。
憲法改正の必要性
憲法には以下のような条文があるため、首相公選制を導入する際には条文改正する必要があります。
第6条 第一項「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」
第67条 第一項「内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決でこれを指名する」
「首相公選制に向けた条文改正」のみならず「憲法改正という動きそのもの」に対する是非は
憲法9条問題にも関わってくるため、その点も十分に考慮しなければなりません。
人気投票のリスク
首相選が人気投票となって、目の前の票欲しさに短期的な政策を掲げた候補者が選出され政権運営が悪化した場合、国民は任期が終えるまで耐えなければなりません。
そういった状況に備えて『国会による不信任決議』を認める案などもありますが、首相公選制のメリットである『リーダーシップが失われてしまう』という指摘もあります。
「出馬要件の設定」や「討論会の開催」などを通じて候補者の選定をしっかり行う必要性があるほか、
政治家としての能力や政策にも目を向けて票を投じられるよう、国民一人一人が責任とリテラシーを持つことが求められます。