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ベーシックインカムとは

ベーシックインカム (通称BI:Basic Income)
『政府が全ての国民に対し恒久的に現金を支給する最低所得保障』
ベーシックインカムの具体的な定義
政府が国民一人一人に生涯に渡り無条件かつ定期的に現金を支給し続け最低限度の生活を補償する制度である。
2020年に政府が初めて行った全国民一律給付金を永続的に毎月実施し続けるような政策と考えると想像しやすいかもしれません。
この政策は18世紀頃から存在していましたが、21世紀に入って以降「AIの台頭」「経済格差の拡大」「社会保障改革」などが取り沙汰されるようになったことで注目されるようになりました。

特に日本では少子高齢化と低所得者層の割合増加により現行の社会保障システムの持続可能性に対する懸念が高まっています。
厚生労働省によると令和5年度の『生活保護受給者は約200万人・公的年金受給者は約4,000万人』となっており、日本国民の約33%が国から定期的な支給を受けていることになります。少子高齢化により、このパーセンテージは今後も増加し続けることが予想されます。
生活保護との違い
支給対象が「国民全員」である点、経済水準による受給要件がない「無条件」である点、そして政府から『自動的に支給』される点が主な違いです。
| ベーシックインカム | 生活保護 |
|---|---|
| 全国民対象 | 世帯収入が13万円以下の人 |
| 無条件 | 傷病要件・資産要件・扶養要件あり |
| 自動支給 | 審査通過後に支給 |
| 労働収入による減額なし | 労働収入による減額あり |
| 使用制限なし | 利用制限あり |
また、厚生労働省によると2018年の生活保護の捕捉率は22.9%、日本弁護士連合会の資料でも約2割とされており、本来受けられる人のうち5人に1人しか制度を利用できていないことが分かります。

ベーシックインカム導入案の種類
ベーシックインカムの導入案としては主に以下の5つが提唱されています。
- 現行の社会保障制度を全て廃止してベーシックインカムを導入する案
- 現行の社会保障制度を一部廃止してベーシックインカムを導入する案
- 現行の社会保障制度を殆ど残してベーシックインカムを導入する案
- 現行の社会保障制度を残して低額のベーシックインカムを導入し、ベーシックインカムの支給額を徐々に増やしていきながら、並行して社会保障制度を徐々に減らしていく案
- 固定額のベーシックインカム+景気による変動額のベーシックインカムを合わせた二階建てベーシックインカム案
ベーシックインカムのメリット
少子化問題の解決
ベーシックインカムは全国民が対象であるため、生まれてくる子供にも毎月ベーシックインカムが支給されます。
そのため、子供を産むことに対する経済的不安が大幅に軽減され子供を産みやすくなります。
仮に7万円のベーシックインカムだと、家族三人で毎月21万円、ひとり親世帯で毎月14万円が毎月支給されることになり、ひとり親世帯にとっても育児に専念しやすい環境になることが期待されます。
- 1位 経済的理由
- 2位 仕事と家庭の両立
- 3位 自分の年齢
- 4位 日本の将来への不安
- 5位 子育ての自信
- 6位 自身の健康状態
- 一般社団法人マザーアンドチャイルド協会『子育て世代が思う少子化に関する調査』より
経済活性化
最低所得が保障されることにより将来への経済的不安が軽減され、人々が安心して消費活動を行えるようにることで、結果として経済の活性化が期待されます。
国債ではなく高所得者への増税を基としてベーシックインカムを導入する場合、国民から国民への再分配となるためインフレが加速する可能性は抑えられると言われています。
また、貯蓄志向から消費志向への移行に伴いディマンドプルインフレが進むことで、企業収益が増加し雇用拡大や賃金上昇へとつながるっていくことも期待されます。
精神的安心感の向上
ベーシックインカムの導入により『自助>共助>公助』から『公助>自助・共助』となることで、公助を土台とした社会保障システムになるため、全国民の最低生活水準が底上げされることになります。
そのため経済的安心だけなく精神的安心感も生み出されるため、失敗を恐れずに色々な事に挑戦できる社会を築くことができます。
- 1位 36.1% 仕事内容・労働環境
- 2位 22.5% 金銭面・職場の人間関係
- 3位 21.8% 将来への不安
- 一般マイナビエージェント『ストレスに関する調査』より
生産性の向上
全ての国民の最低所得が保障されることで、国民の働く目的が「生活のため」から「自己実現や社会貢献のため」へと変わっていきます。
これにより、仕事の選別化が進み「人々がやりたい仕事」と「やらない仕事」が鮮明化していくことで、人々がやらない分野の自動化が促され技術革新が進められることが期待されます。
また、仕事の選別化に伴い職場の選別化も起きるため『ブラック企業の減少』と『起業人口の増加』も予測されます。
行政負担の軽減
あらゆる社会保障をベーシックインカムに一本化し自動的に一律支給することで、支給に係る事務手続きが不要となり、行政負担が大幅に軽減され行政の効率化が進むことが期待できます。
一律支給のため高所得者層にも支給されますが、高所得者層からは後から税金で回収することが可能であるため、行政負担をかけずに適正な再分配を行うことができます。
ベーシックインカムの導入で期待されるその他のメリット
- 貧困層の包括的な救済
- 格差是正
- 雇用の流動化
- スキル習得の機会拡大
- 地方創生
- 地方過疎化の解消
- 年金問題の解消
- DV減少
- 犯罪の減少
- 家事育児などの無償労働への収入保障
- AI・自動化による雇用喪失への備え
ベーシックインカムのデメリット
財源問題
仮に毎月7万円のベーシックインカムを導入した場合、単純計算で年間105兆円の財源が必要となるため、現行の社会保障をカットしてベーシックインカムの財源として充てることが求められます。
そういった中で既存の社会保障をどの程度削減していくべきかと言う議題が浮上することになるでしょう。

社会保障が削減される
ベーシックインカムの導入においては様々な案がありますが、財源を考えると少なくとも一部の社会保障の廃止は避けられないでしょう。
『ベーシックインカムの財源として提言されている案』
- 医療費扶助 医療助成 → 廃止or年齢問わず一律三割
- 国民年金 → 減額or廃止
- 厚生年金 → 減額or廃止
- 生活保護費 → 廃止
- 児童手当 → 廃止
- 児童扶養手当 → 廃止
- 育児休業給付 → 廃止
- 大学補助金 → 減額or廃止
- 相続税 → 増加
- 消費税 → 増加
- 所得税 → 増加
- 金融所得税 → 増加
- 失業保険 → 廃止
ベーシックインカムの導入で懸念されるその他のデメリット
- 本格的な実証実験が困難
- ギャンブル増加
- 物価上昇
- 増税
- 就労人口の減少
- 経済競争力の衰退
- 知的レベルの低下
- 国籍に関わる支給対象者の選別
- 労働意欲の低下
諸外国での実験では『ベーシックインカムを支給しても人々の労働意欲は従来通り維持される』という結果も出ていますが、あくまで実験であるため期間が定められていることや国民性や経済状況・税制の違いなども考慮すると、日本での導入において参考にすることは難しいでしょう。